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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

きゐこ文書(混沌)

関連キャラクター:猪市 きゐこ

きゐこ日誌
 
 そう……夢を。
 ユメを視ていたのだわ。
 楽しかった事も、面白かった事も。
 ここが最初で最後だったかさえも。
 どんなゆめか憶えていないのだわ。
 白く揺蕩う微睡みの世界の中で。
 まるで水のように揺らぐ足元。
 このまま目覚めてしまうと。

「どうせこの想いも……」

 この目を開けてしまえば。

 忘れてしまうのだわ。

●─桜月陽日

「んっ……」

 軽く伸びをする。
 いつもどうりに寝覚める。
 ベッドから這い出ようともがく。
 ここまでが朝の動作かしら。

 ガシガシと歯を磨き、顔を洗う。
 洗面所から部屋に戻り。
 窓を開けてしまえば。
 
 バッと。

 外の風がフワリと入ってくる。
 きゐこは身体に陽射しを浴びて。
 鉄と蒸気に囲まれた世界を考える。

「さて、と……」

 前の世界の事も。今の世界の事をも。
 何をして過ごそうかと思いを馳せる。
 
 そんな朝の1ページ。

▲─雨月雲日

 怪しい雲行きだわ。
 グゥと、お腹の中が鳴る。
 けれど外に出掛ける用件がある。
 きゐこはギルドに行く準備をする。
 お気に入りのフードローブに着替え。

「フゥ……憶えている内に」

 鞄にパンと水を詰め。
 杖も忘れず持って行く。
 扉を開け、草の上を歩く。

「急がないとだわ……!」

 ふと、空を見上げると。
 ドンヨリとした雲が。
 雨が降る……かしら。

 ポツ……ポツ……タッタタタッ。

 目の前に大木が見えて来た。
 きゐこはたまらず雨宿りをする。
 しかし、その木陰には先約がいた。

 「ニャア!」

 着ていたフードローブのおかげだ。
 突然の雨に身体を濡らさずに済んだ。
 小さな布切れで先約の雨粒を拭う。

「少し休ませて貰おうかしら」

 持って来たパンを出して小分ける。
 先約と二人で食べる。水を飲む。
 乾くまで……まだ時間はかかる。

「ニャア! ニャア!」

 杖先にフードローブと布を掛ける。
 雨はまだ止みそうにないかしら。
 そんな昼下りの二人の出来事。

 曇空が晴れた。

■─紅月葉日

 本を読む。
 絵を描く。
 星を観る。
 明日はナニをしようかしら。

 魔術の研鑽。遊ぶ事。悪戯。
 夜の音を聴いていた。満月。
 月を眺める。

「綺麗だわ……」

 前にいた世界も同じだったのかしら。
 今いるこの世界と同じ様に。
 辺りが静まり返る。夜の景色。
 何か……を……思い出す。
 きゐこは……。
 フッ、と。

 カンテラの灯火を吹き消す。

「おやすみなさい」

 窓から月明りだけが……覗いていた。
 きゐこの寝姿が光に包まれている。
 そんな夜ふかしの丑三つ時。
 紅く色付いた葉が散る

★─雪月氷日

 終わる終わる次なるステージへ。
 これから始まる新たなる希望。
 度々、訪れる白い世界の中。
 どんな事をしようかしら?

「忘れない様に書き留めておくわね」

 私だけの【きゐこ日誌】を綴って。

 微睡みの中、憶えている。
 この文章の読み方を。
 夢の中でミていた。
 過去から現在を。

「私だけの秘密……ね」

 楽しかった事も、面白かった事も。
 ユメを視ていたのだわ。
 そう……夢を。

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