PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

リリーと覇竜での日常

関連キャラクター:リリー・シャルラハ

空を見上げながら~深緑決戦前日、フリアノン周辺にて~
「あ……」
 覇竜の昼下がり。橙の大地と雲ひとつない空、そのキャンパスを大きな黒い影が翼を広げ切り裂いた。
「カルアさん、見た? 今のあれ」
 荒野の崖から真上を見上げていたリリーが空を指差すと、どこか遠くを見るようにゆっくりと目を開け、カルアは小さく頷いた。
「うん、ワイバーン……危険だから帰ろう、リリーさん」
「はーい」
 亜竜のいる日は外に出てはいけない、それがフリアノンを出るときに言われた指示であった。竜種には遠く及ばぬ存在だろうと調教されていない亜竜は人々にとって驚異だ。あの飛竜に対しても、そのうち討伐依頼が出るのかもしれない。
「……自信家なんだね、あの子」
「カルアさんは」
 リリーはカルアの腕から肩へとよじ登り彼女の耳をひっぱり小さな声で囁く。
「やっぱり竜相手に戦うのは、嫌かな?」
 踏み込んだ質問にカルアは歯を見せて笑い、首を横に振る。
「仲良くしたい……でも、悪い子にお仕置きは必要だよ」
 覇竜で初めて見る、今までの彼女からは考えられない返事と表情。リリーは目を見開き、でも、と零す。
「竜は何でもしちゃうし出来ちゃうんだから、痛い目見ないとね」
「カルアさんも、なの?」
「うん――若い頃は邪魔な星を、翼で飛ばしたり、噛み砕いたり、角や尻尾やあんな所で貫いたり……意外?」
「……見たかった!」
「……その感想が意外だよ、リリーさん……」
 カルアは大きな手のひらで空から自分の身長の1/6ほどの少女を覆い隠すようにしてフリアノンへと足を進めるのであった。
「……だからね、私に遠慮しないで、竜と戦っておいで……ね」

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