PandoraPartyProject

幕間

ディルク様とのあれそれ

関連キャラクター:エルス・ティーネ

ワロスさん
「お嬢ちゃんさあ」
「何ですか? ディルク様。
 いえ、私はお嬢ちゃんではありませんけど!
 私はディルク様よりずっと年上なので、強いて言うならお姉さんである筈ですけど!」
「あー、そういうのいいから。お嬢ちゃん」
「……うぐぐ。お嬢ちゃんではないのに……」
「頭撫でられて赤くなって俯くのはお嬢ちゃん極まりないだろ、常識的に考えて」
「ですから! それはいいと! して! 何ですか、ディルク様」
「お嬢ちゃんって、俺が好きなんだろ?」
「――――」
「あん。違ったっけ?」
「ち、違いませんけど!? わ、分かって仰ってるでしょう!?」
「勿論。で、俺の事大好きなお嬢ちゃんに聞きたいんだが」
「……ハイ」
「俺の何処が好きな訳?」
「……………」

(JCエンジン稼働!)

(何処が好きですって!? 自信家で頼りになって強くて王器があって!
 意地悪な癖に案外優しくて、「俺に任せときな」ってリードしてくれて!
 赤毛も素敵で格好良くてついでに声がフルゴオリさんな所ですけど!?)

(早口完了!)

「……それはその、貴方は。私が一番、どうしようもない時に――そこで輝いていた太陽だったから」
「ふぅん」
「ふぅんじゃないですよ……いじわる」
「そうだなあ、俺は……お嬢ちゃんのそういう所は結構好きだよ」
「!?」
「からかってて面白ぇもん」
「ディルク様!!!」
執筆:YAMIDEITEI
ぽっきぃ・げーむ
「ディルク様!」
「珍妙な声を上げて、今度は何だい、お嬢ちゃん」
「貴女の可愛い女が甘えているのを――珍妙とは何ですか!」
「言うようになったねぇ」
「そう言ったのはディルク様ですからね。遠慮はしないのです」
「はいはい。それでどうした?」
「巷で流行っているゲームをしませんか」
「ゲーム、ねぇ」
「ディルク様は面白いのがお好きかと思いまして……」
「確かに嫌いじゃねえがな。
 ……だからと言ってお嬢ちゃんが棒状の菓子を咥えて俺を上目遣いで見る理由は分からんが」
「分かっていると思うんですけど!」
「やれ、と」
「はい。出来たら、その……こ、この位(のアピール)は私にも出来るので(ごにょごにょ)」
「しゃあねえなあ――」
「――!」
(ばりばり)
「――!?」
(ぼりぼり)
「ん、んン……ッ!? ちょ、ディ……んんん!?」
(もぐもぐ!)
「むっ、ん……は……や、ぁっ……それはちょ――」
「なーに、ヘタれてやがる。『そーゆー遊び』だろうがよ、『お嬢ちゃん』」
「……っ、う、ううぅ……」
「これに懲りたら『隙だらけ』は直しとくこった。御馳走さん」
執筆:YAMIDEITEI
乾いて飢えて
 曰く銀に弱いだとか。
 曰く白木の杭で滅びるだとか。
 流水を渡れないだとか、鏡に映らないだとか、十字架や大蒜が嫌いだとか――
 伝承に存在する吸血鬼はそれ自体が千差万別だ。
 複数のそれに一定の共通点を見出す事が可能だとしても、一つの像を絞り込む事は難しかろう。
 しかしながら、『月』に関する話は一定に信頼がおけるものとも考えられる。
 吸血鬼のみならず、月の魔性は昔から多くの人々に信じられてきたものだ。
 それ自体が神秘を孕み、魔的なシンボルとしての意味を持つというのなら――吸血鬼の有り様も決して例外にはしないだろう。
「……で」
 ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)はラサの『君主』である。
 宮殿の中庭の向こうに覗く真円の月は実に煌々とした輝きを放っている。
 壁に寄り掛かるようにして外廊下で『待っていた』彼の視線の先には、苦しげな貌をした『赤毛の女』が立っていた。
 何十年だか何百年だか振りの天体ショウに浮かれるでもないその姿はどちらかと言えば痛々しさを覚えさせるものである。
「難儀な体質は承知しちゃいるが、こんな時間にお出かけは――聞いてねぇな」
「……っ……!」
 普段はディルクが顔を見せれば尻尾でも振っていそうなエルス・ティーネ(p3p007325)だが、伏し目がちの視線は彷徨う。
 見られたくないものを見られてしまった、罰の悪さを思わせる彼女は『彼』の出方が分からずに惑っていた。
「しんどいんだろ? 『満月』は」
「……はい」
 吸血鬼ならぬディルクにエルスの事情は共有出来まい。
 されど、振り絞るように頷いたエルスに彼はさもありなん、という顔をした。
「それでご迷惑にならないように、ね。相変わらずピントのずれたお嬢ちゃんだこと」
「それは、でも――」
 言いかけたエルスを遮るようにディルクは笑う。
「――来なよ、こっちに。まあ、俺ならアンタがどんなに荒れても暴れても簡単さ。
『どう』なるのかは知らねぇが、何なら噛みついたって構わんぜ」
「……ディルク様!?」
 どうもその状態のエルスを外に出したくはないらしい。
 そう見受けられるディルクは「そうそう」と一言余計な言葉を付け足した。
「まぁ、噛みついてきたら――俺が食っちまうかも知れねーが」
執筆:YAMIDEITEI
加糖
「元気ねぇじゃん」
「私はJCですが、時に疲労する事もあるのです」
「成る程、頑張ったんだな?」
「……ハイ、頑張りました。JCじゃねーですけど」
「こりゃ深刻だな。どうも情緒不安定に見える」
「深刻です。甘やかして下さい。
 ディルク様、疲れた体には糖分が効くんですよ?」
「よし。じゃあ、折角だ。たっぷり甘やかしてやろうか」
「ほぇ!?」
「どんな風がいい? 優しく? 意地悪に?」
「ほ、ホントですか!?」
「ホントだよ。たった今字数が切れたけどな」
執筆:YAMIDEITEI
負けました
「……」
「……………」
「……………………」
 暗鬱なイベントというものは確かに存在するものだ。
 乙女にとってみれば大抵の場合、世界が華やいで見える『好きな人』との一幕も。
 そんな相手の期待を『裏切った』報告をしなければならないのならばひとしおだ。
 大会の喧騒も冷めやらぬ内に控室に顔を出したディルクの顔をエルスはおどおどと覗き込むばかりであった。
「あの、その……」
「あん」
「……その、ハイ。負けてしまいました。頑張ったんですが、えっと……」
 第百五十七回目を数えたイレギュラーズの闘技大会は特別な様相を呈していた。
 勝ち残ったのは順当と言える強豪のドラマと、このエルス。
 大一番の初顔合わせだが、二人は互いに知る顔で別に不仲ではない。
 問題はこの二人の可愛らしい女の子がそれぞれ、ローレットの長であるレオンと、このラサの王であるディルク……
 因縁浅からぬライバルにとって比較的特別と言える存在だった事の方であった。
「……負けました」
 何とも機嫌の悪そうなディルクの様子にそう言うエルスは雨に打たれた子犬のようであった。
 そう、これは代理戦争めいていた。
 終生のライバルと称される二人の、決着の決してつかなかった二人の代理戦争。
 ……超自信家でプライドの塊であるディルクの代表としてこれに敗れてしまったのだからエルスは痛恨の極みである。
(でも、ディルク様。私、頑張ったんですよ?)
 相手は闘技場で上位常連のドラマである。レオンから直接手ほどきも受けている。
 エルスが食らいつく戦いになるのは必然だった。決勝は十分な盛り上がりの末の結果だったのだからやり切った思いもある。
「……ったく」
 呆れたように嘆息したディルクがエルスの方へ歩み寄った。
 無遠慮にぬっと伸ばされたその手にエルスは一瞬委縮する。
 しかし。
「……ふぇ?」
 意地悪な人の事だから。想定された『お仕置き』はやって来なかった。
 小柄なエルスの頭をわしわしと撫でたディルクは先とはまるで違う表情でいる。
「良くやった」
「……あ」
 それでエルスは遅ればせながらに合点するのだ。
 この男、わざと引っかけやがったのだ!
「……もう、本当に! 滅茶苦茶緊張して……頑張ったんですよ、本当に!」
 緊張感から一気に解放されたエルスは珍しく唇を尖らせて抗議めいた。
「それなのにディルク様って言ったらそうやっていつも私を玩具にして!!!」
「あー」
「聞いてますか!? 酷いですよ!」
「んー」
「試合直前に! ディルク様の女とか言うから変な試合は出来ないと……!」
 頭をぼりぼりと掻いたディルクはエルスの顎を持ち上げた。
「ふぇ?」
「――聞いてねえ」
「!? !!! !? !?」
 古来から煩い子供を黙らせる方法は決まっていると言わんばかりだ。
 それはずるい方法に違いなかったが、成る程。この男にすれば恐らくは最効率に違いなかった。
執筆:YAMIDEITEI

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