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佐藤 美咲の夏緒によるおまけイラスト
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イラストSS
『Raspberry Fizz』
無数の弾ける泡が、薄紅色の液体を登ってゆく。
なんのことはない単なるガラスコップに、甘酸っぱい香りが爆ぜる。
――全然違う味だと思った。
人の記憶は徐々に薄れゆくもので、初めは声だという。
そして最後まで残るのは匂いであるらしい。
だから分かってしまうこともある。
あの庭園で飲んだコーディアルのソーダは、これではなかったと。
――あのコーディアルシロップ、銘柄聞き忘れたな。
すべての決断に、後悔なんてありはしない。
決別だって――
遂行者テレサ=レジア・ローザリア。その生き方は、その死にざまは、心の奥底にひどくこびりつくものだった。
あの満足そうな最後の笑顔は、忘れることが出来そうにない。
終焉が近づいている。
それはひたひたと、足音をたててやってきている。
けれどきっと運命の日なんて来やしなくて。
それは最終的な決断とも違っていて。
単に美咲が美咲として、駆け抜けるものなのだろう。
今はただ、今はまだ、何が起きるのかなんてわからないままに。
これまで積み重ねてきたのと同じように。
もしもこれから、たとえ何が起こったのだとしても。
それはどこまでも自分自身の道だった。
勝つつもりのあの子は、きっとまた涙するのかもしれない。
――それでも。
テレサは遠い声でくすくす笑う。
――ねえ、おしえて。
もしも生まれ変わるなら、次はどう生きたいかしら。
※SS担当者:pipi