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カンバセーション・ピース
カンバセーション・ピース
イラストSS
ヘレナは貴族だ。シャイネンナハトに行われる舞踏会へのお誘いも来た。
「エスコートはもちろんヤツェクさまで」
そう言われてしまったのなら選択肢はない。ヤツェクは上品な騎士を連想させるタキシード。ヘレナは刺繍のほどこされたブルーグレーのドレスを。そしてお互いの瞳の色の宝石を。ヤツェクはグリーンのブローチとエポレットのボタンに。ヘレナは首元を飾るワイン色のブローチを。
「肖像画が欲しいのです」
そう希望したのもヘレナだ。ヤツェクは始め気乗りではなかった。今幸福であることはヤツェクが死んだ時にヘレナを悲しませる。
「(いや……。いやそうじゃない)」
一人にさせない。生きて帰る。思い出を作り今を思い切り謳歌しよう。
そうして肖像画の初期の案は平凡なものだったがスケッチを書こうにもヤツェクがカチコチに緊張してしまった。ならば音楽だとヘレナはピアノを弾こうとしたが、
「ヘレナ。ギターを弾かないか?」
「わたくし、ギターは……」
「おれが教える」
そう完成したのは幸福なカンバセーション・ピース。ヘレナは大変喜び、ヤツェクはこれを見返す度に「また教えてやるさ」と微笑む。
※SS担当:7号