イラストSS

　クリスマス……シャイネンナハトと言うんでしたっけ。カップケーキを自作して兄と食べようと思っていたんですが。

「どうしてこうなっちゃったんでしょう……」
　鳥を作ろうとしていたんです。頭の中での完成イメージは完璧でした。頭にトサカを持ち、つぶらな瞳で小さなくちばし、赤い頬──チークパッチと言うそうです──仕上がりはそんなイメージでした。どうして鳥かと問われれば、小鳥は兄が大好きなので。
　淡い黄色のカップケーキを焼き上げ、トサカ、くちばし、頬はチョコレートで部品を作り、チョコペンを絞り目を作る。以上の手はずで出来る算段だったのですが。
「味は……、間違いないと思います」
　レシピ通り作ったのですから。
　家事をしない兄の代わりに僕が家事をこなしていました。するとめきめきと家事スキルは磨かれて行きました。ですが、僕が磨かなければならなかったのは『表現力』だったのかもしれません。

　ちなみに兄の凪斗さんに「鳥に見えなくて」と助けを求めた所、カップケーキを乗せたプレートにチョコペンの文字で「鳥」と書かれました。
　その発想はありませんでした。いえ、でも僕が求めているのはそういうことではなく……。

　※SS担当：7号