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イラスト詳細

聖夜のお届け便

作者 うみちょす
人物 ルナール・グリムゲルデ
ルーキス・グリムゲルデ
エルス・ティーネ
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2023(→おまけイラスト)(サイズアップ)
納品日 2023年12月24日

5  

イラストSS

 ソリが滑る音が聞こえる。
 鈴の音が軽快に響き、夜の静寂を切り裂いて進んでいく。
(……何処に連れて行かれるのかしら?)
 どこか他人ごとのように小首を傾げたエルスの頬を、聖夜の夜風が乱暴に叩いて正気に戻した。戻したが、この状況が改善される訳ではない。
 思えば数刻前、唐突に押し入ってきたルナールとルーキスに瞬く間にラッピングとは名ばかりの簀巻き状態にされてソリに載せられ、あろうことか空を駆けている。
 エルスを簀巻きにしたそれは赤と緑と白に彩られた「いかにも」なリボン。その日を祝うために密かに用意したサンタ衣装に身を包んだエルスを包んだそれは、不思議と窮屈さを感じない。
 リボンを引くルーキスに「大人しくしていてくれればすぐに着くからね」、などと言われたが、眼下を流れる景色の速度を考えるとあと数時間は覚悟しなければなるまい。

 ……待て。
 自分は今、どこに連れて行かれることを想像したのだろうか?
「そ、その……このソリは一体何処に向かって……?」
「「まあまあ」」
 おずおずと問いかけたエルスは、しかし二人の凄く思わせぶりな笑みの前に声が尻すぼみになるのを感じた。
 少なくとも、悪意ありきで運んでいる訳ではないだろう。
 ないのだろうが、それにしたって情緒というものが欲しかった。こんな姿で届けられたらびっくりしてしまわないだろうか。

 ……誰が?
 エルスは再び自問自答する。
 もう答えは分かっているのでは? これから誰と逢うのか、何処に行くのか、どう振る舞えばいいのか、全部分かっているのでは?
 知らないふりをして落ち着こうとしているだけなのでは?

 そう自覚したエルスの顔が、頬と言わず耳といわず一気に赤くなるのだが、それはまた別の話だ。
 更に言うなら、ソリには最初から答えが記されていた。見ていたけど見なかったふりをしていただけだ。
 ソリの側面に燦然と輝く、「お届け先 でぃるく」の看板が。
 
 いや、待て。
 だとしたら、自分は(はるか上空とはいえ)これからディルクのもとへ運ばれることを公然と吹聴しながら移動していることになりはしないか?!
 それは果たして大丈夫なのか? 恥を晒していやしないか?
 ぐるぐると巡る思考は、しかし赤熱化した顔と頭ではちっとも処理できなかった。
 夜はまだまだ、長くなりそうだ。

 ※SS担当:ふみの

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