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ルブラット・メルクラインの棘ナツによるおまけイラスト
ルブラット・メルクラインの棘ナツによるおまけイラスト
イラストSS
陶器のこすれる音だけがしていた。
会話は不要。特に語り合う必要がないからだ。
笑顔も不要。片方はそもそも顔が見えていない。
窓の外に広がる暗い深海はそこが監獄である証。彼女に会いに来るもの好きはそもそも片手もいらないほどのごくわずかな人間しかいないということである。そして、そのごくわずかな人間がルブラットということである。
テーブルの上に用意されたのは真っ赤な紅茶、ルビーチョコレートのケーキ。彼女のご希望ということであるが、甘いものにでも飢えていたのだろうか。いや、ある意味で意趣を凝らしたメッセージなのだろう。
少なくとも彼女の趣味を思えば、そう思う方が妥当である。
三叉神経を櫛で解かし、体性神経を愛で溶かし、喜怒哀楽を塩で咀嚼し、全部全部キレイに鞣してあげたい。
固定化した皮膚に頬擦りして、磨いた内臓を肋骨に詰めこんだ、宝箱みたいな玩具にしてあげたい。
あの時感じた感情はいまだに燻っているのだろう。少なくとも、フォークを向けて見せた彼女の表情から察するなという方が無理なものである。
今はまだその時ではないけれど。この輝かんばかりの夜くらいは、穏やかに。
諫めるつもりで切り分けたケーキを、彼女はご機嫌そうに頬張った。
※SS担当:染