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神倉 五十琴姫の彁によるおまけイラスト
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「時に琴、大陸の北では『おうろら』っちゅう、空に浮かぶ光の帯が見られるんじゃと」
支佐手は日頃から、豊穣とは異なる大陸の文化、異国でしか見れないものに強い興味を抱いていた。そんな幼馴染みの支佐手のことを、五十琴姫は微笑ましく思うのだった。
『おうろら』――オーロラとは一体どれだけ美しい光景なのか、強く心惹かれている支佐手は期待に満ちた様子だった。
「『おうろら』は、極寒の地域でしか見られんちゅう話じゃ――」
支佐手はオーロラについて嬉々として語るが、それがふわっとした知識であることを五十琴姫は知らなかった。
「なるほどのぅ……見に行ってみる価値はありそうじゃな」
五十琴姫は支佐手の誘いに乗り、共にオーロラ見物に向かうことにした。
──かくして2人は極寒の地域、鉄帝の大雪山に訪れた。
雪山の尾根に難なく到達するほどのバイタリティを発揮する2人だったが、鉄帝の寒さは容赦なく襲いかかる。寒さに体力を奪われながらも、五十琴姫と支佐手は尾根から見る光景に感嘆する。
そこには見渡す限り、混じり気のない白銀の世界が広がっていた。積もった雪上には2人だけの足跡が残され、この世界を独占しているように感じられた。しかし、そんな感動を打ち消すほどに寒い。とにかく、寒い。危機的に寒い。
度々吹き荒れる強風によって、多くの雪が舞う中、支佐手はぶるぶる震えながら空を見上げて言った。
「おうろらはぁ、寒ければ寒いほど、よく見えるらしいぞ」
2人は空に浮かぶオーロラを探し続けたが、肝心な要素が抜け落ちていた。2人が今いるのは、日中の雪山──オーロラは夜にしか見られないことをまだ知らない。
震えが止まらない五十琴姫はつぶやく。
「見えるのは、雪ばかりじゃな……」
半ば諦めかけた時、支佐手は「見てみい琴」と五十琴姫の袖を引いた。
「何ぞ、綺麗な川と花畑が見えて来よった。あれが噂に聞く『おうろら』っちゅうもんじゃろうか」
「よ、ようやく見つかったのか!」
命を脅かすほどの寒さというのは、時に判断を鈍らせるものである。
2人はどうにかこうにか下山することができ、仲良く風邪を引く程度で済みましたとさ──。
※SS担当:夏雨