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覇竜。星が綺麗な地にて
覇竜。星が綺麗な地にて
イラストSS
「見て、見て! ムサシ!」
ユーフォニーが駆ける。
余り走ると転ぶぞ、とムサシは言うが、笑いながらなので余り説得力がない。
此処は覇竜、村からほんの少し離れたところ。極光が降り注ぎ、青に、赤に、緑にと美しくカーテンのように天を彩っている。
「だってオーロラなんて、見るの初めてなんだもの!」
鼻の頭を赤くして、ユーフォニーは本当に嬉しそうに笑って。
そうして一頻り見て回った後、ムサシの元へと戻って来る。
いちばん大好きな人と見る景色は、人生でいちばん綺麗で。
ああ、きっとこの空が輝くのは、誰かに此処に居るよって伝えたいからなのかもしれないって。そんなロマンチックな事を考えてしまったりもして。
「ほんとうに、きれい」
色んな事を思うのに、口からこぼれるのはそんなほんの一言だけ。
もどかしい。もどかしい。でも、きっと伝わっていると信じている。
そう、だからムサシはユーフォニーの手を握って、空を見上げる。
「お前と見る空だから、とても綺麗だ」
其の言葉はユーフォニーには十分に過ぎた。
そう、貴方と見る空だから。だから、きっととてもきらめいて見えるのだろう。
大好きの代わりにそっと寄り添う。二人は手を繋いだまま、そうして暫し、自然が齎す光の魔法を見上げていた。
※SS担当:奇古譚