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(輝かんばかりの夜が……あなたにも訪れたなら)
(輝かんばかりの夜が……あなたにも訪れたなら)
イラストSS
「アドレ様、こっちです」
前を行くニルを追いかけてからアドレは「待って」とドーナツをかじってからそう言った。
二人で出掛けていたわけではない。出会ったのは偶然だ。たまたま、ニルが目の前に居た。それだけなのだ。
「アドレ様」と声を掛けられたときにアドレはぎくりと肩を揺らした。知り合いと会うなんて思っていなかったからである。
「アドレ様はドーナツがお好きですか?」
「まあまあ。なんでも食べるけど、ニルは?」
「ニルはあたたかいものと、おいしいを探しに来ました。アドレ様のおいしいを教えて貰っても良いですか?」
「いーよ、探そうか」
ニルをじいと見てからアドレは「あれとか」と雪だるまのボールドーナツを指差した。適当な決定にも思えるが、アドレが食べたかったものでもある。
「後で一口頂戴」とだけ告げてアドレは楽しそうな足取りのニルの背中を見詰めていた。
「……アドレ様?」
「いや、不思議だね。敵同士なのに」
「はい、でも、アドレ様とニルはお友達です」
「友達、かあ。まあ、悪くはないのかもね」
どこか満足げに呟いてからアドレは目を伏せた。
――なんて、こんな時間があればよかったけれど。
アドレはそんなことも口にしないだろう。カロルだけが彼の本心を良く分かったように「ニルはアドレの友達だったわ」というのだ。
*SS担当:夏あかね