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紫葉 真緒のゆころうによる2人ピンナップクリスマス2023
イラストSS
練達に位置する再現性東京――希望ヶ浜。その希望ヶ浜に立ち並ぶマンション、『サニーウェル希望ヶ浜』に紫葉 真緒の住居はあった。彼もまた、同じマンションのB棟に住居を構えていた――。
サニーウェル希望ヶ浜のB棟には、マンションのオーナーが運営するバーがあった。改装されたB棟の管理人室は、『BAR: SOLARIUM』として住民が憩う場所にもなっている。そのため、2人が鉢合わせすることになるのは必至だった。
「あ…!」
「…あ?」
数メートル先にあるバーの入り口を前にして、真緒は近づいてきた人影に気づき、瀬戸 啓吾の姿に視線を向けた。
兄弟のように仲が良い幼馴染み──だったが、諸々の事情で現在は犬猿の仲となっている相手。時を経て混沌世界で再開したものの、2人の間にあるわだかまりは未だ消えていない。
真緒と啓吾は互いに顔をしかめ、険悪な空気が流れる。どうやらそろってバーに向かおうとしていることに気づいた真緒は、啓吾をからかうように言った。
「おい、啓吾。バーに通うのはまだ早くないか? お前、未成年だろ?」
啓吾は憎たらしい笑みを浮かべる真緒に向かって反論する。
「成人済みだわ! 計算もできないくらいボケてんのか?」
売り言葉に買い言葉でしばらくいがみ合う2人だっが、遠くから響く聖夜の鐘に気づき、その音に耳を澄ます。
わずかに間が空いた後、啓吾は真緒に握手を求めるように片手を差し出す。混沌世界のクリスマス──すなわちシャイネンナハトは、争いを禁じられた日でもある。そのしきたりに従うように、啓吾はこの場は休戦しようと働きかけた。
真緒は、啓吾が差し出した手を黙って見つめ続けた。気まずさがピークに達しようとした時、啓吾は手を引っ込めようとする。しかし、真緒はその寸前で啓吾との握手に応じた。
「まったく……強情な奴だよな」
そう言って笑みをこぼす真緒と視線が合ったが、啓吾は思わず顔を逸らす。
「お前には言われたくないねっ」
啓吾は依然として無愛想な態度のままだったが、2人は当然のように隣り合うカウンター席に腰かけた。
夜が更けると共に、2人の間のとげとげしい空気は、そろって酒をたしなむのと同時に薄れていった。そこには、子どもの頃に戻ったように笑い合う2人の姿があった。
※SS担当者:夏雨