イラストSS

「ネーヴェさん、寒くないですか」
「わたくし、は……大丈夫です。クラリウス様はいかがですか？」
「僕も大丈夫です、ありがとうございます」
　イルミネーションで昼もかくやという明るさの中、ネーヴェとシャルティエは連れだって歩いていた。どちらから誘った訳でもなく、ごくごく自然な流れで赴いたそこで、白い息が重なりそうな距離を保ち、二人は歩く。
　お互いがお互いを気遣いあう姿からは、互いが互いに相応以上の思慕を向けている事は明らかだった。――そしてお互いに大きく遠慮があることも伝わってくる。おずおずと繋がれた手、たどたどしい歩調、そのどれもが互いへの強い気遣いを見せている。
　繋いだ手が素肌なのは、きっと互いの熱を感じたいがため。
　両者が手を握る力を加減しているのは、お互いに対する遠慮の表れなのだろう。
　だが、この寒さから守るには少し心許ない。シャルティエは我知らず、繋いだ手を己の上着のポケットへと引き込んだ。
　首から上へと上ってくる熱感を誤魔化すようにはにかむその姿に、ネーヴェも思わず笑みを返した。
　余裕さえ見える両者の顔、その内心を知るのは自身ばかりで……。

※SS担当：ふみの