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特別な夜を、君と
特別な夜を、君と
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輝かんばかりのこの夜に。
告げるルーキスの瞳をまじまじとエルピスは見て微笑んだ。
「カクテル、ですか」
「そう。エルピスは甘口の方が好きだろう? どうかな、飲んでみて欲しい」
ルーキスの言葉に頷いてからそっと口を付ける。味わいは、まだ慣れぬものではあるけれど心地良くて。
ルーキスは「おいしい」と呟いた彼女のかんばせを眺めてから薄らと笑みを浮かべた。
きっと、エルピスはカクテルにのせた言葉にも気付かないだろう。
特別な夜に捧げた温かな想いはルーキスだけが知っているのだ。
「お酒は、余りしりませんでした。はじめてを教えて下さったのですね」
「有り余る光栄だって言えば良いかな」
エルピスはぱちくりと瞬いて「はい」と頬を朱色に染めて頷いた。
時間よ、止まれ。
そう願いを込めたのはルーキスの手にしたブランデー・クラスタの柔らかな陽の色だった。
彼女が手にしたエンジェル・キッスはその名前だけでも良く似合う。
知っているだろうか。あなたに見蕩れていることを。想いを君に届けたいと願っていることを。
人よりもゆっくりとした速度で、自らの在り方を確かめる彼女を困らせては仕舞わぬように――今はその傍で穏やかな時間を過ごしていよう。
*SS担当:夏あかね