イラストSS

　知られてはいけない、知ってはいけない。
　清楚で可憐なシンデレラには特別な秘密がある……ということを。

「プレゼントですか？　ちょうど、無事に配り終えたところです」

　粉雪の降る聖夜の都市から、暖かな室内へと戻ってきたサンタのトールは、どこからどう見ても可愛らしい女の子。さらさらのロングヘアをなびかせて、華奢な肩の露出したサンタ衣装でツリーの近くにやってくる。

「あっ、ホットドリンクの差し入れ……ありがとうございます」

　差し出されたあったかマグを両手で受け取り、ぺたりと座り込む姿は、見る者をどきりとさせる。絶対領域がまぶしくて、まさか「はいてない」というやつなのでは、と思わせる危うさ、無防備さがある。
　ギリギリ見えそうで見えない絶妙に欲を煽る座り方――本人は、無自覚！

「疲れているみたいですね？　ぼんやりして」

　柔らかい声色が気遣うように言って、宝石のように煌めく青い瞳は純粋な好意をたたえている。
　どこからどう見ても、女の子。清楚で可憐なプリンセス――その正体が美しいプリンス様なのは、秘密です。

　甘いドリンクから白い湯気がほわほわ揺れて、暖炉で明るい炎が踊ってる。
　夜明けを告げる鐘までは、まだまだたっぷり時間があるから。
　
「――特別な夜を、あなたと一緒に」


　※SS担当者：透明空気