イラストSS

　シャイネンナハトを祝う街の中、階段から降りるルーナに向けてトールは手を差し伸べていた。

「気をつけてくださいね」
「ああ、ありがとう」

　転ばないように慎重に階段を降りていくルーナ。
　いつルーナが落ちそうになっても大丈夫なように立ち位置を調節するトール。
　その構図はまさに道の中を歩く女王と、それを守るための騎士のような形になっていた。

　それもそのはず、ルーナはトールが元の世界で仕えていた女王であり……女装を命じた張本人。
　そしてトールはルーナの遺伝子によって生み出された人間であり、何も知らない近衛騎士。
　遺伝子上は親子でもあり、女王と近衛騎士という関係性の２人。構図がすぐに固まるのも納得できる。

「さて、次は何処へ行こうか」
「そうですね……気になる場所はありますか？」
「ふむ……」

　トールに尋ねられて考え込んだルーナ。
　突然の問いかけに答えを用意していなかったため少々時間を取ったが、行きたいところを告げて再び動き出す。
　もう一度、トールの気をつけての言葉を聞いて、優雅にゆっくりと降りていった。

　これが、最初で最後のシャイネン。
　せめて今日という日だけは、幸せになってという母の願いが何処かへ飛んでいく。

　※SS担当：御影イズミ