イラストSS

「トールは線が細いからな……」
　ぶつぶつ呟きながらチラチラと横で様子を見ているトールと見比べながら魁真は服を物色していた。
　ここはメンズ服の専門店。二人は一緒に買い物に来ていた。今日のお目当ては色々あって男性ではあるが女装を続けていた結果、男物の私服を持っていないトールの服探しだ。
「どっちが好き？　どっちも合うと思うけど」
「うーん……」
　魁真から示される二つの服を前にトールは首を傾げた。迷っている様子に手早く服を当てて、幾度か見比べてから「俺のおすすめはこっち」と片方を差し出す。
　差し出されたそれを改めて自分に当てて、トールは尋ねる。
「どうでしょうか？」
「もちろん似合ってる」
　魁真は頷いて、じゃあこれにしようとトールは決めた。こういう時、魁真はセンスが良くてとても頼りになる。
　魁真が自身の容姿を活用するため、変装のため、仕事の為に否が応でも磨かれたセンスが、今は平和にも友人のために使われていた。
　シャイネンナハトの、争いのない平和な日に。人殺しの悪人だとしても今日ばかりはこんな日があっても良いのではないだろうか。
（これで少しはかっこいいって言ってもらえるでしょうか）
　次はボトムズだな、と歩き出す魁真に続いて、トールは選んでもらった服を抱えて嬉しそうに笑った。

　※SS担当者：心音マリ