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逃亡者
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さて。聖なる夜といえばパーティも盛大に開かれるものだが……
「わ、わ? なに、どうしたのギルオスさ……お、降ろして?」
「いやそう言う訳にはいかない――
気付くのが遅れてごめんね。結構、辛かったんじゃないかい?」
その一角でハリエットは――ギルオスに抱きかかえられていた。
ハリエットの身はいつもの動きやすいものではなくパーティ会場用の特注ドレスだ。髪も整え麗しい雰囲気となっている、が。『だからこそ』というべきだろうか――慣れぬ服装に加え靴もヒールとなっていれば、身体に大きな負担が掛かっているものだ。
故に案じたギルオスが彼女を抱きかかえて歩む訳だ、が。
これは所謂『お姫様抱っこ』だ。
なんともはや、少し。少しだけ――いや割と気恥ずかしい感情が胸を駆け巡ろうか。
他の参加客からも見られている気が……
「折角の機会だったけれど無理をさせてしまったね。
解散には少し早いかな?
どうだろう。僕の家で珈琲でも飲みながら、ケーキでも食べようか」
「え――いいの?」
「勿論さ。少なくとも僕は、これで終わりにはしたくない」
シャイネンナハトはまだまだ続くのだ。
この一夜を共に過ごさんと決めた君と――いさせてほしい。
胸の内に渦巻く穏やかな高揚感は尽きぬのだから。
二人は往く。窮屈なヒールから解放され、そのまま抱えられながら。
気恥ずかし気なハリエット。
笑みを見せるギルオスの二人は――仲睦まじい様子であった。
※SS担当:茶零四