イラストSS

「あ、あの……」
「……」
「あのっ！」
「……」
　シャイネン・ナハトの夜の街。
　ココロ＝Bliss＝Solitudeと郷田 貴道はデートを楽しんでいたはずだった。
　いつものようにココロが率先して、貴道の手を引いて、彼はきっとはいはいと不器用にいつもみたいに着いてきてくれるはずだった。
「あ、あの……みんなこちらを見ているのですが……」
　まさかそんな彼に突然お姫様抱っこされるなんて……誰が予想出来ようか！
「聞いてますか貴道さん！」
「……うるせー黙ってろ」
「……」
　そう言われた事に納得はしていないココロだったが、彼は目に見えて照れくさそうにしている。ムスッとはしているが不機嫌……と言う訳ではない事は何となく察する事が出来た。
「なんですか、らしくない事して……」
「……黙ってろって言っただろ」
　もしや彼自身もタイミングを間違えたと思っているのだろうか？　だとしたら本当に不器用な人だとココロは心の中で笑ってしまう。
　それでもこの大層大柄で不器用な腕を拒絶しないのは、ココロとて『そう言う事』なのだろう。
（一方的な片思いだと思ってたんですけど……少しは期待しても、いいのでしょうか？）
　ずっと思いを寄せていた相手の突然の行動に驚きつつも、嬉しさは心から滲んでココロは黙って微笑むだけ。

　※SS担当：月熾