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『キャンドルに火をともし』
「万事、ぬかりはなかろうな」
「はい猊下、もちろんです」
二人の腹心は堂々と、一言一句をたがわずに唱和した。
「よかろう、ならば征かん」
栄えある聖銃士隊にとって、偉大なるアストリア枢機卿の御言葉は聖典の一句と等しく、否などあろうはずがない。
白亜の回廊――その大理石の石畳を進む姿は気高く、靴音はなお高く、キャンドルを灯す助祭たちが一斉に首を垂れる。
だのにこの日、この時。華麗な法衣、そして銃士服をあえて脱ぎ、ウールニットを纏うた理由は一体何か。その奇跡の瞬間は否が応でも訪れる。
聖教国ネメ――じゃなかった。
正義の都で、重い扉が開かれる。
「――猊下、どうぞご賞味あれ」
「ええい、まかりならぬ!」
「げ、猊下!」
「この聖夜、幸分かち合うのが習いであろう」
「……!!」
「なれば我らも、ひとつご相伴にあずからせていただき」
「無礼講だというておろうが!」
「な、なれば! うおっふ! ちょーーうんめー!」
「サンディ! な、ならば……うっめーーーー!! やっべこれやっべ」
「ひょわー!」
瞳を輝かせたのは、アストリアだけではない。
見事六号、苺を戴くのホールケーキ、そしてかぐわしき秋摘みの茶葉に――切り分け、食べ始めたならとまらない。
生クリームのしとやかな甘味は、こってりと、けれどしつこすぎず。
上品なままで舌の上ですっと溶けてゆく。
「え、まじうま」
「めっちゃうま、なんぞこれ」
「急に崩れすぎじゃろが、レストランの人とかにあの枢機卿一行やばないとか思われたらどうする!」
「あ、はい、じゃあええと、うっわ誉れたっけ」
「まじ気高けえー」
「よし!」
大粒の苺は甘酸っぱく、ほっぺのあたりがきゅーっとなりつつ。
上質な鶏卵がうみだす、蜜のように濃厚なスポンジの甘味は、けれど軽やかに。
これをオータムナルの紅茶で迎え撃つ。
「おっふ、うっま!」
「え、めっちゃうま、どうです猊下」
「うまーーーい! うまかろう! うまかろう! 次、次じゃ!」
「二切れ目、行きまーす!」
「待て俺にもよこせ」
美味しい is 正義!
スイーツこそジャスティス!
枢機卿のこの奇跡、それはあらたな聖典へと刻まれ、この国の正義の規範となるだろう。
それまで彼らの聖務はとまらない。
――征け、セイクリッドマスケティア!
その威光を天地あまねく知らしめし、邪を祓い悪を滅するのだ。
ハッピーシャイネンナーーハトっ!
※SS担当者:pipi