イラストSS

　今日は死ぬにはいい日だ。
　そんな日がいつ訪れるかもわからないイレギュラーズにとって、遺書はあれば便利なものだ。
　度重なる強大な敵の出現、差し迫る終末への足音を前に瑠璃が『それ』を意識し始めたのも仕様のない事だった。墨を擦り、羊皮紙と向き合い筆を執る。
　書き出しで躓いた。必要のない言葉が混じった。この相手にこれは伝えるべきではない……自分の終わりを告げるという文章の、なんと面倒で細かいことか。
　何枚もの羊皮紙を書き損じに変えつつ、丸めた書き損じと乾かすために広げたものとを背景にして彼女は後ろに倒れ込んだ。眼鏡を外し目元を揉めば、自らが如何に疲れていたのかがよく分かる。
（私だっていつか死ぬ。或いはそれが明日か明後日か、ずっと先になるかの話で……）
　生きるために戦っている。死に時を考えようなんて思ってない。だが、死んだ瞬間、すべてを無駄にはしたくない。

　贅沢な悩みなのだろうか？

　遠くで聞こえる子供達の声で、今日が聖夜であることを遅まきながら理解した。
　気分転換に買い出しに行こう、そう考えた瑠璃は、しかし不自然な態勢で横たわった弊害を身を以て味わう羽目になるのだった。

　※SS担当：ふみの