イラストSS

「……きゅ、急に、なんだよ」
　エレンシアが不貞腐れたように呟くのも無理もない。先程まで楽しく聖夜の街並みを眺めていたかと思えば急に隣を歩いていたルシに路地裏へ連れ込まれ口付けられたのだから。
「……まぁ、そうだね、ごめん」
　確かに急だったかもしれないとルシは珍しく目を逸らした。
「……な、なんだよ。……何か言いたい事でもあるのか？」
　明らかにいつも違う様子から、エレンシアは彼を覗き込むように見上げる。
「……正直、こう言うのってどう言ったらいいかわからなくてね」
「こう言うの？」
　聞き返すエレンシアにルシが不意に見せてきたのは……リングボックス。
「は？　え？！」
「こんな日に言いたい事なんか、私達の間では一つしかないけど……なかなか締まらないね？」
「なっ、お、おまっ！！」
　これを見せてきた理由なんてエレンシアだって察しがつく。
「はは」
「わっ、笑うな！！　お前、いつも急過ぎるんだよ！！　……まったく、後で「やっぱり無理」とか言う事になっても知らねぇぞ？」
「本気じゃなければこんな事考えないよ」
「……だよな？　うん。ありがとう」

　飄々とした彼はいつだって自分には本気で来てくれる。それが嬉しくて抱き締めれば、彼もまた抱きしめ返してくれた。

　※SS担当：月熾