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冬の星天に祈る時
冬の星天に祈る時
イラストSS
シャイネンナハトに浮かれる街の賑わいも届かない場所で、静寂の中をユーフォニーは一人歩く。
一面に広がる銀世界の中で、その存在を証明するのは足元に残る足跡のみ。
不意に吹き付ける風の寒さに身を震わせながらも歩き続け、想いを馳せるのはこの一年に何があったか、だ。
暖かな風の中で草花に囲まれた春。熱い日差しで火照った体を海の水で冷やした夏、実った果実と舞い散る紅葉に季節の移ろいを感じた秋。
楽しく穏やかな日常もあれば、厳しく辛い戦いもあっただろう。その一つ一つがかけがえのない思い出だ。
そして今――。
「はぁー……」
かじかむ指先に白い息を当てて立ち止まったユーフォニーが空を見上げれば、雲一つなく澄み渡った満天の星空がオーロラのベールに彩られていた。
その光景は、今だけは他の誰でもないユーフォニーだけのもの。そんな巡り合わせに感謝してか、それとも別のなにかに対してなのか。瞑目して指を汲むと祈りを捧げる。
「さぁ、行きましょうか」
たっぷりと数十秒の祈りを終えたユーフォニーはそう呟くと共にまた歩き出す。
決してその歩みを止めることは無く、一歩ずつ前へ進み続ける。例えその先に何があったとしても――。
※SS担当者:東雲東