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ルナ・ファ・ディールのバクレツアロワナによる2人ピンナップクリスマス2023
ルナ・ファ・ディールのバクレツアロワナによる2人ピンナップクリスマス2023
イラストSS
昼間っから妖精郷だの深緑だのに突っ走った甲斐があった、と思う。
少なくともルナにとってはそうだった。
意を決して自ら彼女の領域に足を踏み入れたのは、実はこれが初めてだった。
ため息が滲んだ窓際に、いつもよりも腹に力を入れて声を掛けた。
「よぅ、1日缶詰の箱入り姫様。少しはお前さん自身も楽しんだっていいんじゃねぇか?」
掲げて見せるは二人とも共通、お気に入りの酒。
ちょっぴり値の張るあいつである。
「これはこれは。ルナが楽しませてくれるのかな」
「ま、ちょっとばかしはな。グラスだけ頼んでもいいか」
「ああ、わかった」
春~夏にかけて咲く花だったか。アイリスの花はそう簡単には見つからなかった。
けれど彼女のエリアに入るのならば、何か手土産が欲しかった。自分には似つかわしくない行為だとわかっているのに。それらしくないとわかっていたのに。それでも。
でも渡す勇気だけは、まだ出なかった。
(これだから、俺はよォ……)
いっそ酒でも回ってしまえば勇気の一つでも出るのだろうか。ぐい、と力強く飲み込んだルナを、ラダは見守っていた。
「美味いな」
「だな」
揺れるアイリスが見えていること。もうしばらく、黙っておいてあげようかな。
※SS担当:染