イラストSS

　シャイネンナハトの夜。
　殿こと一条夢心地、すずな、耀澄恋の三人はとある寿司屋を訪れていた。
「シャイネンナハトに寿司屋とは……また面白いことを考えるよのう」
　扇をぱたぱたと揺らし、様子見といった雰囲気で殿一行はのれんをくぐる。

「いらっしゃいませ！　本日のレーンメニューはシャイネンナハト仕様となっております！」
　店員のそんな販促の文句に、三人の腹の虫が一気にぐぅ～と鳴り響く。
　たしかにレーンにはにぎり寿司や巻き寿司だけでなく、ケーキも回っている。
「これは、そそりますね……」
　じゅるりとよだれが垂れそうになる、すずなと澄恋。
案内されて席に座ると殿は早速、王道である鮪を箸でつかむ。
「はやっ」
「寿司は何よりねたの鮮度、その店の質もここで決まる」
　一口で一貫をほおばった殿は、その旨さに舌鼓を打つ。
「ほっほほ、これよこれよ……」
　両頬に手をあて、幸せそうに味わう殿。
　一方のすずなはと言うと、何食わぬ顔で同じく鮪をどんどん食している。
「おいしいです」
　次は何を食べましょうかとレーンを見渡す。
　ふと、殿を挟んで横を見ると、澄恋が目にも止まらぬ早さでタブレットを駆使して注文をしていた。
「そ、その手がありましたか……⁉」
「先手必勝」
「しかも、皿の量が何気に一番多い⁉」
「当然」
「な、何だか、負けてはいけない気がします……！」
「何じゃ？　楽しそうな宴には麿も混ぜてほしいのじゃ！」
　こうして殿も混ざっての、寿司大食いプチ大会が始まったのである。
「せっかくのシャイネンナハトの夜じゃ。何か面白いことが起きぬかと思っていたところよ！」
「勝利者への報酬はあるんですか？」
「そこは、麿が用意するとしよう」
「それなら」
　三人全員、納得できた様子。
　この不思議と真剣な雰囲気に他の客も惹かれたのか、三人の周囲にはギャラリーが集まり始める。
　いったい何が始まるんだと、ざわつくギャラリー。
「誰が一番多く、そして美味に食せるか！　いざ、尋常に勝負、勝負～‼」
　そのかけ声とともに三人は一気に寿司に食らいつく。

　その後シャイネンナハトの終わる午前零時まで、三人の戦いは続いたという。
　スピードはバラバラなものの、三人は確実に皿の数を増やしていった。
　しかし最初に殿が泡を吹いて倒れ、勝負はすずなと澄恋の一騎打ちとなる。
　しかし、閉店時間である午前零時を迎えてしまったため、ここで勝負は終了。
　営業時間の延長を求める者もいたが、さすがにそこには逆らえず。
　結局、誰が一番だったかは夜の闇に溶けていってしまったのである。

　※SS担当：悠空(yuku)