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國定 天川の佐東敏生による2人ピンナップクリスマス2023
國定 天川の佐東敏生による2人ピンナップクリスマス2023
イラストSS
「晴陽」
呼び掛けてから天川は『まじない』を込めた指輪をそっと薬指へと嵌めた。
「ピンキーリングも良いが、その場所は俺が貰っておこうと思ってな」
「そうですね、天川さんの場所ではありますし」
何気なくそう言った彼女に天川はふ、と笑った。晴陽という女は本当に感情表現が下手だ。
これでも様々な表情を見せてくれるようにはなったのだ。ゆっくりとした速度で歩んで来た大人の恋愛は、少し立ち止まって後ろを振り向くことも多くあっただろうか。
「しかし、寒くなったな」
「はい。……実は手袋を忘れたのです」
「珍しいな」
「指輪を頂戴して、見ていたら」
「そりゃ、嬉しい話だが」
からからと笑った天川に晴陽はその顔をじいと見詰めてから「何か、クリスマスのプレゼントを頂いても良いでしょうか」と問うた。
「何か欲しいのか?」
「……指輪を頂いたので、それから……」
「ああ」
「それから、私からも何か……返すチャンスを頂く、とか」
「プレゼントを贈るチャンスをプレゼントされたいって?」
可笑しな事を言うと揶揄えば晴陽は「何か欲しい物はありますか」と問うた。見上げる彼女の頬にそっと触れる。
「じゃあ、晴陽を幸せにする栄誉を頂けるだろうか」
「……それは、勿論」
瞼がそっと閉じられて行く。触れるだけ、軽く触れるだけの口づけに鮮やかな未来を乗せていた。
*SS担当:夏あかね