イラストSS

「ねえ、定くん」
「うん、如何したんだい？　なじみさん」
　真っ直ぐに向き合えば彼女はにんまりと笑っていた。猫の尾も耳もない。だから、感情をそこから読み取ることは出来ないけれど。
　――君って、本当に分かり易いんだ。
　定はまじまじと彼女を見た。その瞳はいつだって、大好きだと伝えてくれている気がするのだ。
　自惚れちゃいないけれど、自覚しないほど馬鹿じゃない。彼女がそうだというなら、それを否定するのは愚の骨頂、なんて思ったりもして。
「……なじみさん？」
「定くん、私達はカップルだぜ。それにクリスマスだ」
「うん、そうだね。晴れて結ばれたばっかりのほやほやカップルさ」
「その場合、求められるのは一つだけだと思わないかい？」
「えっ、いや。うん。いや、僕だって男だからさ、そういうのを考えたことはあるけれど、多少性急すぎないかい？」
「……？」
「えっ、だって、キッス（あ、やべ、声が裏返った）とか、でしょ！？」
「うん」
「ぼ、僕達はまだゆっくりと」
「……ん？」
　首を傾げてから、目を瞑って。唇をつんと付き出した彼女に定は固まった。
　可愛い顔をして居るな、とか。そんな風な顔をするんだ、とか。混乱しながら定はゆっくりと身を屈めていく。
　背をぐっと伸ばした彼女の唇まであともう少し――


　*SS担当：夏あかね