イラストSS

●アイの温もり
　道雪は、少し前から外部との連絡手段を遮断した隠匿生活にあった。突然何者かの襲撃を受けた彼は、敵の正体を掴むまで身を潜めていたのだ。
　以前に取り付けたチャンドラとの食事の約束を忘れたわけではないが、まだ姿を現すには早い。後で埋め合わせをすればいい――そう思ってこの日も隠遁を続けるつもりだったが。

　＊

　約束の時間をとうに越えて店の前で待ち続ける背を見た時、言葉は消し飛んだ。
　無理やり突破してきた追手による傷の痛みも忘れて、一秒でも早くその温もりを感じたくて。道雪は強引にその背を抱き締める。
「っ！」
「まいったな。本当に……俺は君の事になると、どうにも理性的でいられなくなる」
「……アイしてくださっているのですね、我（わたし）を」
　回した腕へチャンドラが触れる――と、彼が包帯の上で爪を立てた。忘れていた痛みが戻る。
「では、我はこの傷をアイしても構いませんね？　これほど我をアイする貴方が、我より先にアイさせたのですから」
「君のそんな愛も、俺は欲しいと思ってしまうよ」
　最後の痛みと共に温かな光で傷が消えると、道雪は更にに力を込めて彼を掻き抱いた。
　自分と彼の温度を、確かめるように。

　※SS担当：旭吉