PandoraPartyProject

イラスト詳細

最果てに行き着くまで

作者 うみちょす
人物 ハインツ=S=ヴォルコット
イラスト種別 関係者1人+PCピンナップクリスマス2022(サイズアップ)
納品日 2022年12月24日

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イラストSS

 虹色のイルミネーション、仲睦まじく歩む恋人たち、はしゃぐ家族。それら一切を無視して、二人の男は路地裏に足を踏み入れた。今日という日がいかに光に満ちていようと、裏通りに迷い込めば深い暗闇が舞い降りる。
 霊障の仕事は聖夜の決まりを守ってくれない。むしろこうして祝日にこそ、悪しき情念は蓄積されるものであった。
 Nが胸ポケットから煙草の箱を取り出す横で、ハインツは先ほど見かけた情景が頭によぎり、隣にだけ聞こえる小声で囁きかけた。
「シャイネンナハトの夜ぐらい、彼女でも作ってシケ込んだらどうだ?」
「馬鹿言うなよ、こんな身体で。アンタこそメアリアンさんのためにも幸せになったら?」
 昔の妻の名に、彼は瞑目し、首を振った。野暮な問い掛けだったとNも肩を竦め、無言で煙草の一本を差し出した。
 かちりと、ライターの音が一度だけ。煙草を寄せ合ったのは何方からだったろうか。
 二人の煙草の先の火が交わる。心を交わすように、少しだけ。橙色の灯火は二人の指先を心許なく照らし出す。
「俺はアンタでいいよ」
「お人好しなとこは変わらずだな」
 苦笑したハインツであったが、突如として眉を顰める。
「……おっと。霊障がはじまったぞ」
 Nの眼光も険しさを増し――これからは仕事の時間だ。ハインツは愛銃に手を掛けた。

 ※SS担当者:梢

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