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しにゃこのはちごうによる3人ピンナップクリスマス2022
イラストSS
「……着たが」
「アウラちゃん、サンタさんの服装とっても可愛い!」
「かわいいですねええええええ!」
エピトゥシ城のパーティー会場、その片隅で。
サンタ衣装を着込んだしにゃこは、同じく身を包んだアウラスカルトを前ににやりと笑みを浮かべた。
「やっぱり宇宙狙えますよ、しにゃと一緒に目指しましょう。二人ならやれます、勝てます無敵です」
「な、なにを言っているか分からないが。これはプレゼントを配る老人の装束ではなかったか」
「シャイネンナハトっぽいし可愛いからいいんです! はいあーん!」
アウラスカルトはどこか得心行かない様子だが、そんなことはお構いなく。しにゃこはケーキをフォークでひとすくいして差し出してやった。
スポンジケーキとクリームと苺のひとかけらが、ちょうどバランス良く美味しそうな所を。
「我とて遠の昔から雛竜ではない、自ずから食せるが」
「そういうのじゃなくて、あーんですよぉ」
「あ、あーん……」
やたらと押しの強いしにゃこに気圧され、やや狼狽えたアウラスカルトが口を開き――ぱくり。
「どうですか!?」
「うまい」
「うまいいただきましたー!」
「これかぶせてあげるね、はい!」
「我には角があるゆえ不要かとおもった」
「大丈夫なのを選んだから大丈夫だよ」
「大丈夫ゆえに大丈夫か」
こちらもやはりサンタ衣装のセララが、帽子をかぶせてやった。
さきほどセララが贈った、今日のための装いだ。
ちょっとしたクリスマスプレゼントだったりする。
「すごく似合ってるよ、可愛い!」
「か、かわ……我は竜だが」
そんなやり取りも、ずいぶん慣れてきたものだ。
初めて出会った時には、まさかこんな存在とは思ってもみなかったけれど。
「汝等も食えばよかろうに」
「うん、ボク達も食べよう、いただきまーす!」
生クリームとスポンジケーキの甘みが、セララの口いっぱいに広がった。その奥から爽やかな苺の香りと酸味が現れ、きゅっとすっぱくて思わず舌鼓を打つ。
「すっごくおいしいよ、ほら、こっちも食べよう!」
「いいですね、かわいいですね、あーそこ、こっち向いてください、あー!」
「人は食物をこれほど精緻に形作り、それを食すためすぐに崩すのだな」
「確かにケーキって綺麗だよね、でも美味しいからたべちゃうんだ」
静かな眼差しで色とりどりの菓子を見つめるアウラスカルトは、人の文化に興味をもったのだろう。
本で読む程度の知識しかないだろうから。
ツリーにリースに、まずは色々教えてあげようと思った。
――あ、それとも。
セララが閃いた。
本が好きなら、やっぱり漫画がいいだろうか。
※SS担当者:pipi