イラストSS

　赤い円錐の頂点は垂れ下がる。自重と白いぽんぽん飾りによって——つまるところ、サンタ帽である。
　どこから知識をインプットしたのか、シャイネンナハトでも定番アイテムといえるそれを身に着けたモアレだ。『憧れのサンタさんの衣装』というには少々変化に乏しいが、突っ込むのも野暮というもの。幸せは当人次第。季節を思えば寒そうな装いも鉄騎種にとっては無問題なのだから。少女の輝かんばかりの笑顔こそが証明であり、たったひとつの真実だった。

　さて、そんなモアレからのプレゼントは銀盆の上に。まるでメインディッシュを配膳するウェイトレスの仕種で差し出されたボックスの中身は本人のみぞ知る。正しい知識が齎されていることを願うばかりである。
　お揃いの赤いリボンのラッピングが彼女の首にも施され、それがモアレもまたプレゼントのように見せていた。

　キラキラ、キラキラ。街中を彩るイルミネーションが機械の瞳に反射する様は宝石にも劣らない。
　賑やかな音。跳ねる声。眩しい光。あたたかな笑顔。それから店先の装飾のひとつひとつまで。視界いっぱいに溢れる事象をメモリに刻みながら、サンタ帽をご機嫌に揺らしながら、モアレの聖夜は過ぎていく。

　※SS担当者：氷雀