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金枝 繁茂のヤぴによるおまけイラスト
金枝 繁茂のヤぴによるおまけイラスト
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――「おい、火を貸せ。今すぐだ」
口に煙草をくわえ、翳した薬指で手招きをするように振り返るあのひとの姿を、鮮明に思い出せる。
『せんせい』――そう、金枝 繁茂は呼んでいた。
彼が悪魔との契約によって主体的な行動を縛られていると知った今から思えば、その呼び名は結構な皮肉だったのかもしれない。
訂正することも、まして嫌がるそぶりもしないのだから、あのひとは本当にタチがわるい。
――「安心しろ。俺は不死身だ。……嘘だがな」
最後に聞いたあの言葉を、やはり鮮明に思い出せる。
繁茂はビルのガラス窓に背をつけて、くわえた煙草に火を付けた。
ふりかえる街の灯りは、今日も平和な日常。
そのずっと向こうに、見えない誰かの犠牲があった。
「『せんせい』……帰ってきたら、あなたの本当の名前を、あなたの口から紹介してくださいね」
人づてなんて、ごめんですよ。
いつかのあのときみたいに、ガラスにそっと煙草の火を近づける。
鮮明に思い出せるあの日のように。背中合わせに立ったあの日のように。
灰の落ちかけたそれが、触れた。
「悪魔を殺した後のあなたは、それこそ犬に噛まれただけで死ぬのかもしれませんね。
けれど……そんなあなたと、また飲みに行きたいのです」
『せんせい』ともう一度だけ呟いて、繁茂は皮肉に笑った。
※SS担当:黒筆墨汁