イラストSS

　練達は咲良が居た元の世界に酷似している部分も見受けられる。特に再現性東京は言うまでもないだろう。
（……帰ってきたみたいで、嬉しいような、寂しいような）
　混沌で出会えた仲間を置き去りにして帰るのは心苦しい。けれど、混沌のそとに置いてきた友人との再会は、諦めるのは少しだけ難しくて。
　いつもとは違う日常が当たり前になり始めていた。それは、元の世界を忘れてしまうことのようにも思えて、なんだか苦しくなってしまう。
「……ら、さ……ら」
　ああ、なんだか涙が出てしまいそうだ。
「咲良！」
「え、ええ、何？！」
「ぼーっとしてたら躓くからな。何かあったか？」
　だけど。混沌で出会えた人の中には彼――エーレンもいる。
　大切な。まだ伝えられていないけれど、とくべつな気持ち。
（……ほんと、鈍いんだから）
　クリスマスに二人きりなんて、『意識してください』と言っているようなものなのに！
「ふふ、寒いなーって思ってただけ。それよりもほら、早く早く！」
　手を取って走り出す。輝かんばかりのこの夜の光の海へと。
「ええ？！　待て待て落ち着け咲良！？　クリスマスは逃げないぞ」
　ああ、そうだ。きっと今笑い会えているのなら、未来だって恐れることはないはずだ。
　きっとそうだと――信じている。

　※SS担当者：染