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夜式・十七号のばんたろによるシングルピンナップクリスマス2022
夜式・十七号のばんたろによるシングルピンナップクリスマス2022
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鉄帝のとある酒場にて、十七号は酒を飲んでいた。
数か月前にニ十歳を迎えた彼女は、晴れてその資格を得たからである。
これで大人の仲間入りと聞くと少し浮ついたような、落ち着かない心地になった。
酒場の主人に成人して初めての酒なのだと正直に伝えれば「奢りだ」と黄色のカクテルを出された。
「これは?」
「パラダイスっていう、アプリコットを使ったカクテルだ。
度数は強めだが……鉄帝の奴なら平気だろうさ」
頂きますと呟いてから十七号はグラスに口を付けた。初めてのアルコールに一瞬顔を顰めた十七号だが、アプリコットとオレンジジュースの果実の爽やかさとフルーティな味わいに感嘆の息を漏らした。
「成程、これは美味いな」
「夢の途中」
「え?」
主人の言葉に十七号は思わず聞き返した。空いたグラスを片付けながら主人は続ける。
「パラダイス(そいつ)のカクテル言葉だ。あんたはまだ夢の途中にいる、そうだろ?」
それだけ言い残すと、主人は他の客の注文を聞きに行ってしまった。
「……夢の、途中か」
自分にとっての夢とは、何だろうか?
十七号はぼんやりと店の外を眺めた。
其処には唯、白い雪と黒い夜の静寂があった。
※SS担当者:白