イラストSS

●Women like a man with a past, but they prefer a man with a present.
　パステルイエローが張り巡らされた壁紙に、奔るピンクのレェスの縁取りがいじらしい。
　柔らかなカーペットで寛ぐテディベア、天辺から足の爪先まで写す大きな姿見は乙女の必需品。『可愛い』をぎゅうっと詰め込んだ調度、その中央に置かれたウォールナットのティーテーブルに掛けられたクロスは純白で、施された繊細な刺繍からして持ち主の気質を伺わせる。
「お待たせしました、ご主人様」
　『彼女（かれ）』が手と手を重ね可愛らしく高い聲に合わせ身を揺すれば、ミニスカートが翻り愛用の豊かなウィッグで模ったツインテールが左右に跳ねた。
「──ん、かわいい。女の子より女の子らしいよね、トールちゃん」
　其れを笑うでもなく、貶すでもなく芽衣子は呟くとじっくり時間を掛けティーカップに注がれた紅茶の馥郁さと奥行きを味わい、表情に乏しい乍らも満足気である事が見て取れた。
「寒いですから、スパイスと柑橘をミックスしたスペシャルブレンドティーですよ」
「うん、温まるよ。一寸だけ嫉妬するなあ、何たって何を着せても完璧なんだから」
「お褒めに預かり光栄です。でも、此れ少しスカートが短……」
「嗚呼、長かったかな？　ならこっちに……あったあった、今度は其れでお願い」
「ちょ、ちょ、待って下さい芽衣子さん！　此れは流石に危ないと云うか際ど過ぎですよ――――！？」

　※SS担当者：しらね葵