イラストSS

●How many more times do we have to go to bed before New Year's Day?
　極当たり前の様に朝帰りをした姉の軀からは、識らない――甘い馨がした。
　歪乍ら『弟』と云う立場で見たとしても『姉』の美貌を鑑みれば、その辺の男も女も黙っては居ないのだろう。うきうきと大層なご機嫌で帰って来るなり風呂に入りに行く彼女の背中を『本当に風呂が好きだなぁ』と見送って、自室に引っ込み炬燵で暖を取っている間に、青年の意識は暗転する。

　次に目を醒ましたのは其れから凡そ一刻後の事だ。
　どす。どすどすどすどす。確実に膝を狙って繰り出される蹴りに、呆れつつ顔を突っ伏した儘で溜息を吐いた。
「もう、姉さん。痛いよ…………っていうか執拗に右膝だけを狙うの止めてくれる？
　何で？　僕何かした？？？」
「ふふふ兄さん、この妹にスキを見せるとは甘いですよ♪
　其れよりお茶を淹れて下さいですヨー」
「ええ……？　自分でやって下さい……って痛ぁッ！」
「届きませんー、あー手が届きませんネー！　あとお蜜柑も剥いて下さいネ」
「嗚呼、はいはい。でも蜜柑位は自分で……」
「手が橙色になってしまうじゃないですか」
「…………」

　『やっぱり年越しは実家が最高ですネ、おこたにお蜜柑、適当な雑誌に年越し蕎麦、おせち……』などとぼやく至東にケリーは思わず『えっ』と声を挙げずには居られなかった。
「ね、姉さん。年末の予定は……？」
「ありませんヨ、もーう年内はずっとだらだら！　そして兄妹のスキンシップ！」
「僕未だ仕事納めしてないのにいい迷惑……って痛い痛い痛い！」
「ふふーん、逃しませんヨ！
　此れを機に家族仲が深まれば良いという『妹』……何と素晴らしき事でしょう」
「うっわ、マジでぇ……？
　勘弁して下さいよもう――……！！」

　※SS担当者：しらね葵