イラスト詳細
人と過ごす記念日とは、如何許りな物なのか。知り得る術は皆無為れど。
人と過ごす記念日とは、如何許りな物なのか。知り得る術は皆無為れど。
イラストSS
一つの窓を隔てても、こちら側もあちら側も大差ない。人々が談笑する様は、普段よりも少しばかり浮ついている気がする。いいや、気のせいではないだろう。
松瀬 柚子(p3p009218)がテーブルに置いた電子機器はピクリとも震えやしない。カフェラテは少し冷めてしまっただろうし、パンケーキだってしっとりとメープルシロップがしみ込んできている。
けれども彼女はそれらに口をつける様子は見せず、液晶の光らない電子機器へ目を向けることすらなく、ただ外へ視線を送っていた。
(誰かと過ごす記念日……ね)
腕を組んでイチャつくカップル。両親と両手を握って歩く子供。騒いでいるような様子の若者グループ。
そんなものを何となしに眺めてみる。特に誰かを見たいというわけではない。強いて言うなら視線の先に彼らが居ただけなのだ。
きっと誰も彼も、この日の予定を合わせてきて、ああして時間を共にしているのだろう。
――人と過ごす記念日とは、如何許りな物なのだろうか。
幾ら考えども、考えるだけでは理解し得ない物であろうとは思う。しかし知る術が無い者からすれば、考えることしかできないとも言えよう。
いつの日か――其れを知る時が来るのだろうか?
※SS担当者:愁
挿絵情報
- 公認設定『故郷と、私』