イラストSS

　多くの人々が行き交う大通り。その通りでは、無数の電飾やきらびやかなオーナメントが飾りつけられた大きなツリーが目を引いた。通行人を見下ろす巨大なツリーに、刻見 雲雀も自ずと視線を向けた。
　周囲のイルミネーションも夜闇の中で一際輝き、シャイネン・ナハト──クリスマスの訪れを感じさせる。
　群衆の波の中にいた雲雀は、ある人物の姿を見つけて目を見張る。視界にハイライトされるように浮かび上がったその姿は、雲雀とよく似た青年だった。
　即座に振り返る雲雀だったが、青年の姿はすでに雑踏に紛れ、人混みの向こうに消えていた。
　雲雀はひとりつぶやく。
「――今、彼がいたような……」
　雲雀はどこか諦め切れない様子で、しばらく青年の姿を探したが、「いや、まさかね」と思い直し、人の流れに逆らうのをやめて歩き出した。
　わずかに交わった2人の道は、また別々の方角へと別れていった──。

　※SS担当者：夏雨