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【Scheinen Nacht2022】
【Scheinen Nacht2022】
イラストSS
冬の寒さは慣れていると思っていた。
暖かい所にすむジェラルドよりも、自分の方が寒さに強いのだと。
それでも、ヴィーザルの冬は足下から凍えるようなものだった。
「はわ……寒いねジェラルドさん」
「ああ、そうだな」
答えたジェラルドはコートの前をぎゅうと閉めて何処となく震えているようだった。
いつもは威勢の良い彼が寒さに縮こまっているのを見て、アルエットは目を細める。
「ふふ、ジェラルドさん寒がりさんなのね」
「んだと……」
くすりと微笑んだアルエットにジェラルドもつられて小さな身体を掴まえた。
そのまま高い高いでもしてやろうと持ち上げた瞬間、アルエットがジェラルドの腕を叩く。
それは明確な拒絶だった。
屋根の上ににへたり込んだアルエットはジェラルドを見上げる。
「あ……ぁ、ごめんなさいジェラルドさ」
無意識の自分の行動にアルエット自身が驚いていた。
ジェラルドは申し訳なさそうに自分の帽子をアルエットへと渡す。迂闊だった。彼女は不意に男性に触れられるのは苦手なのだ。
「俺が何かアンタに気に触る事したらそれで叩いてくれ、怖がらせてごめんな?」
ジェラルドの帽子を抱え込んだアルエットは「ううん」と首を振る。
「びっくりさせたのは私の方なの、ごめんなさい……もう大丈夫だから」
「そうか、ならいい」
彼はアルエットの頭を優しく撫でて、いつも通りに口角を上げた。
※担当:もみじ