イラスト詳細
マリエッタ・エーレインの茶月こまによるおまけイラスト
マリエッタ・エーレインの茶月こまによるおまけイラスト
イラストSS
ふわり、ふわり。音もなくはらはらと舞い落ちる雪が、星のない夜のなかで静かに踊っている。
馴染みのあたたかいカフェの店内で、マリエッタは紅茶とあまいケーキに舌鼓を打っていた。やさしい香りのする紅茶に、ほっとひと息。
ひとりでゆっくりと過ごすシャイネンナハトも、なんだか心が落ち着くもので悪くない。客のまばらな店内のレコードから流れるクラシック音楽は、聴き覚えがないはずなのに、どこか懐かしくて。
ふと、視線を感じる。何気なく窓へと視線を遣れば、そこにはもうひとりのお客様。
マリエッタによく似た貌の魔女は、深紅のドレスに身を包んでいた。ましろの髪を靡かせて、ドレスよりも深い赤をしたワインをグラスの中で揺らしている。
楽しそうに微笑んでいるように見えて、此方を見る視線はどことなく神妙な様子をしている。
「心配しているんですか?」
思わずそう尋ねてしまったのは、かつての自分――未来を潰す者の表情が、まるでこちらを気遣うように見えたからで。
ぱちりと瞬きした魔女が目を見開いたものの、けっして彼女から言葉がかえってくることはない。
「……大丈夫ですよ」
なにが、とも、どうして、という理由を告げる必要はないけれど。乙女は微笑みをかえす。
聖夜に寄り添いながら、乙女と魔女の夜は静かに更けていく。
※SS担当者:遅咲