イラストSS

「私、今回の件でルカ・ガンビーノに借りを作ってしまいましてね。
　その彼の招待とあっては応じぬ訳にはいきませんし、パーティにはパートナーが必要でしょう？」
「それで？」
「お嬢様にも是非、来て頂きたく」
　寛治の誘いを受けてリーゼロッテはやや考え倦ねたが了承した。己が事の発端でもある此処で「パートナーくらい用意なさいな」などと言うわけもない。
　やけに殊勝な顔をしたリーゼロッテに「そう落ち込まないで下さい、マイレディ」と寛治は囁いた。
「ドレスはどうしようかと考えて居ただけですもの。エスコートというならば」
「ええ、青薔薇を飾る美しいドレスを用意致しましょう。
　その夜、貴方のパートナーとして青薔薇をこの身に飾ることをお許し頂いても？」
　穏やかに囁く寛治の眸をじいと見詰めてからリーゼロッテは「嫌な人」と囁いた。
「どうしてですか？」
「わざわざ聞くだなんて」
「偶には悪戯位させて頂いても宜しいでしょう。お嬢様と共に美しき夜空でのワルツを楽しめる又とない機会なのですから」
　リーゼロッテはそっと目を逸らしてから「無事にエスコートなさいな」と一層美しく微笑んで見せた。
　その夜の主賓はまた別だ。ああ、けれど。
　寛治にとってはどの花よりも一番に青薔薇だけが美しく見えるのだ――


　＊SS担当：夏あかね