イラストSS

「―――そうして、サンタクロースさんはこんばんはとあいさつをした」
　淡々と、柔らかな声音で読み上げる霞帝の声音に耳を傾けて「わあ、こんばんはなのだわ！」と章姫が返事をする。
　霞帝の膝の上にちょこりと座った章姫は可愛らしくクリスマスカラーのワンピースとケープを身に纏っていた。
　鬼灯からすると迚も不服なのだが、そう、実に不服なのだが、愛しい嫁殿は『お父様』に逢うために準備をしてきたのだ。
　霞帝も章姫を実の娘のように愛でてくれている。こうして何かと顔を見せればお土産や絵本を用意してくれているほどに。
（いや、嫉妬することではないのだが――！）
　章姫は何時も霞帝の絵を書いては楽しい思い出を語ってくれる。父親への愛情だ、決して亭主に向ける物とは違う。
　違うと分かって居ながらも妬いてしまうのが『夫心』なのである。
「ねえ、帝さん、サンタさんって本当にいるのかしら？」
「章姫は良い子だからな、きっとくるだろう。何か願い事をしたのか？」
「あのね、鬼灯君とお揃いのものが欲しいってお願いしたのだわ。それからね、帝さんにも何かって思って」
　欲張りかしらと頬を押さえた章姫に「何時も愛らしいのだな」と頭を撫でた霞帝はやや複雑そうな顔をしている鬼灯に気付いてから思わず吹き出したのだった。


　＊SS担当：夏あかね