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花の値段もタダじゃないんスけど。……わかってます?
花の値段もタダじゃないんスけど。……わかってます?
イラストSS
「…………」
花屋の店先に並んだ、いくつもの花を見定めている美咲。
本当はこんなことをしに来る予定なんて1つもなかった。……1つも。
去年のシャイネンナハトもこうやって、花を買った。
そのときはROOで知り合ったショッケン・ハイドリヒとアストリアのために買った。
――じゃあ、今年は誰のために?
「……これください、ッス」
少しだけ視線を白い薔薇に向けて、店員を呼びつける美咲。
その表情は店員から見れば、買いたくもない、という表情だっただろう。
(……でも)
自分が買わなきゃ、誰も買わない気がする。
――パトリック・アネルのための花なんて。
今年もシャイネンナハトまでに事件がたくさんあった。
鉄帝国なんて、今も新皇帝を巡る戦いが始まってしまっている。
この冬が過ぎればまた、さらなる戦いが鉄帝国で繰り広げられるだろう。
(みんな、いい加減にして欲しい)
今、こうして支払っているお金は。
ソシャゲの福袋を買うためのお金で。
ちょっと余ったら売れ残りをケーキを買うために用意していたというのに。
安くない花を買うなんて、もう懲り懲りだ。
――今はまだありもしない新聞記事が僅かに脳裏を過って、否定として首を横に振った。
※SS担当者:御影イズミ