イラストSS

　世界中が輝かんばかりの祝祭にも、曇った顔はなくならない。そういう社会情勢であったり、たまたま運の巡りが悪いせいだったり、気温や天候の変化に負けてしまったり、当人にはどうしようもない理由だってきっと多い。そんな時、たったひとりの女の子に出来ることはなんだろうか？

　幸せを謳うクリスマスソングとイルミネーションの光の中、馴染みきらない染みとなって歩く人々へ向けてココロは声を放つ。特別大きく張り上げる必要はない。眩しすぎる街を嫌って、塞がれてしまった耳へ優しく手を添えるように。
　医学を志したのは人を助けるためだけれど、心を救うのは簡単ではない。それでも、アイドルめいた衣装を纏った体にめいっぱいの愛を詰め込んで、ひとりでも多くの視線を奪っていく。どうか俯かずに済むように。
　声が届けば。目と目が合えば。営業なんかじゃない、心の底からのスマイルを貴方へ。この日この時、出会えたことは孤独が見せた幻なんかじゃないと焼き付けるように。
　白い指先が宙をなぞる。描いたハートマークの軌跡が光り、ココロからの温度を伝えるようで——

　『誰かを元気にしてあげたい』。その想いが奇跡の夜に魔法になる。

　※SS担当者：氷雀