イラストSS

　高層ビル群の一角にある、夜景を見渡せるパーティー会場──。
　参加者はVIPばかりのようで、クリスマスのパーティー会場は品格漂う雰囲気があった。
「あ、あの……誘ってくれて、ありがとうございます」
　トール＝アシェンプテルは、男性参加者の1人にエスコートされて会場に訪れた。
　鮮やかな青色のカクテルドレスを可憐に着こなすトールは、どこか緊張している様子だった。そんなトールの緊張をほぐそうと、エスコートする彼はトールのドレス姿を褒めちぎる。若干強張った笑顔を見せていたトールだったが、その表情は和らいだように見えた。
　参加者に混じってオードブルを楽しむ合間に、トールは窓ガラスに映り込んだ自身のドレス姿を改めて眺める。ゆるくウェーブがかかった腰まである長髪、胸元をカバーするようにあしらわれたドレスの花飾り──その姿は、どこからどうみても女性にしか見えない。
　トールのことを女性と思い込んでいる相手に、トールは内心ハラハラしていた。トールはただ堂々と振る舞い、優雅なパーティーの時間を楽しんだ。

　※SS担当者：夏雨