イラストSS

「視察に参りますわよ！」
　うきうきとしたカヌレに付いてこいと誘われてげんなりとしたエイヴァンはついて行く。
　シレンツィオのリゾートでは貴重なソルベの卵の殻を見せられた。アレはいいのかと問うたのが悪かったのかも知れない。お嬢様は「勿論ですわよ、アレは素晴らしくって。わたくしも婚姻を結ぶ相手にしか殻を見せることはありませんもの」などと語り続けている。
（自分の卵の殻を見せるってのはどう言う心境なんだ……）
　いまいち理解出来ないエイヴァンはシャイネンナハトの案内を手に観光を楽しんでいたカヌレに「何処に行くんだ」と問うた。一応仕事、一応任務、一応『護衛』なのである。
「お兄様へのプレゼントを買いに参りますの。何か案はありますこと？」
「案か……そうだな……」
「ありませんの？」
「木彫りの熊はどうだ。冬っぽいだろう」
　丁度、土産物に乗っているとカヌレの手にした冊子を指差すエイヴァンにカヌレは彼と熊を見比べてから「似ている」と呟いた。
「まあ、『エイヴァンモチーフ』をお渡しになりますの！？　そ、そんなにお兄様を」
「違う」
「ふふ、よろしくってよ！　コンテュールの威光を感じて下さったのでしょう！？」
「違う」
「あら、護衛をしてくださるわたくしには貴方モチーフは下さいませんの？」
　良く分からないが楽しそうならばそれで良いか、とエイヴァンは肩を竦めたのだった。


　SS担当：夏あかね