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「ふたり」で
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●If you remember me, then I don’t care if everyone else forgets.
パチパチと爆ぜる暖炉で照らされた赫の天鵞絨に、『ふたり』――アレンとリリアの華やぐ笑顔があった。
「其れで? 其処からお話は如何なるの?」
冬摘みの苺を大きく口を開けて一口で、なんてのも『ふたり』だけだからこそ。其の甘さにゆるゆるとリリアの頬が幼な子の様に綻んでふうわり咲えば、アレンの寝不足で深刻な隈の出来た目元も緩む。
「えぇっと――……嗚呼、待って、『姉さん』。ほっぺにクリームが付いてる」
「あら! 厭だわ、私ったら」
柔い皓の手帛で拭ってやれば、『美味しかったから、つい』だなんて恥じらいを見せる小さな淑女が尚の事愛おしくて。
「喜んでくれて善かった。前々から『姉さん』に食べさせてあげたかったケェキ屋さんなんだ」
「有難うアレン! ふふ、お話の続きも気になるのだけれど……貴方、私に隠し事をしていない? 例えば、」
背中に隠していた小さなギフト・ボックスを見透かすかの様な眸。美しい碧と紅い果ふたつが交われば、青年は気落ちした様にがっくりと肩を落とし、『お手上げだ』と両手を挙げた。
「……――はい、此れはプレゼントだよ。開けてみて?」
「そうでしょうと思ったの! 私達の間に隠し事は無しよ、まあ、此れは此れは!」
大振りのロードクロサイトを細やかな花弁の開く薔薇に象って、タッセルの下げられたイヤリング。石言葉は――
「心の癒し、になるんだそうだよ。此れを半分ずつ付けたくて……如何かな?」
「とっても素敵! じゃあ私がアレンに、アレンが私に。付け合いっこ、しましょう?」
ともすれば、口付けすら出来る距離。左耳に感じる重み、ゆっくりと離れて行く彼女の掌を思わず掴んだのは、焦燥だろうか。
「あ、その、ほら。未だ云ってなかったなって。ねえ、姉さん、」
「……――輝かんばかりの此の夜に。嗚呼、何だか眠くなって来ちゃったや」
※SS担当者:しらね葵