イラストSS

　家々のあかりがやわらかく灯る街並みのうつくしさを、はらはらと降る白雪が彩っている。その雪のしろさに紛れて、長身の少女が街の広場を歩いている。
　どこか踊るような軽やかなステップで、フローラは自分の視界に広がる日常を感じていた。
　ふっと立ち止まり、空を見上げる。瞬く星と雪のかがやきが、少女を照らす。
「……綺麗」
　微笑む彼女の横顔は、一年前とは随分違って見えるかもしれない。沈む昏色の緑の眼差しは、あの頃よりもずっと本来の明るさを取り戻していた。
　あんなに憧れていた外へと出る一歩を踏み出したからこそ、こんなにも綺麗な世界の中に居る。
　外の空気が心地よいことも、街角の花や人々の笑顔が素敵なことも、自分が勇気を持ったから感じることが出来た。
　誰かにとってはちっぽけかもしれないけれど、フローラにとってはおおきな達成感。
　胸に宿る誇らしさがうれしくて、その表情は花のように綻ぶ。

　来年のシャイネンナハトも、ううん、今よりもっと誇らしい自分で在りたい。

　自分自身と向き合って、歩み始めたばかりの彼女の道のりは、きらきらと輝いている。
　少女はまだ知らないけれど、それは彼女が愛おしいと思うこの綺麗な世界のような彩をしていた。

　※SS担当者：遅咲