イラストSS

　大きなビル群だったものが立ち並ぶ街並み。練達。今年の初め、竜種の襲撃により蹂躙し尽くされて区域だ。多くの死者が出た。人の営みが破壊されたのだ。

　その時とはうって変わって静かなものだった。聞こえるのは虫の音と鳥のさえずり、そして風の吹く音。空が青い。数時間前の雨が嘘のようだ。水溜まりは青空を反射していた。かろうじて残っているビルの鏡面にも空は反射している。青い空間が広がっていた。

　復興の妨げにならぬよう車ほどの幅の瓦礫はおおかた撤去されている。しかし蹂躙の傷跡は大きい。えぐれた地面をおおうように鉄板で仮の道路とするところもあった。

　瑠璃は頭の笠を直す。そしてまた一歩踏み出す。手に持つ花束──献花を落とさぬように気をつけながら。
　一歩一歩踏みしめるたびにぱしゃ、ぱしゃと足元の水面が波紋を広げる。

　たどり着いた先はモニュメント。慰霊碑だ。簡素な作りではあるがせめてもの弔いにと建てられた。ふもとにはいくつかの弔花。悼む人が多くいるのだと感じさせる。

　目をつぶり手を合わせ祈りを捧げる。その眠りが穏やかなものであることを切に願う。

　※SS担当者：7号