イラスト詳細
【シャイネンナハト2022】ひだまり
【シャイネンナハト2022】ひだまり
イラストSS
其れはまるで、水に漂う月を掴んだような幸せ。
聖夜だから出掛けなければならないという決まりはないから、蜻蛉は縁と共に屋内で過ごしていた。
そちらの方が、きっとお互いに気楽だと思ったのだ。
一緒にご飯を食べて、美味しいねと笑い。そうしてお互い、ゆったりとした時間を過ごしていたのだが。
――そっち向かんよって、大丈夫よ。
そう言って寝転がる縁の懐に寝転んできた蜻蛉。
白いうなじが短い髪の隙間からちらりと見えて、これはこれで眼に毒だなァと縁は苦く笑うのだ。
――少しだけ、ええでしょ
――これくらい、ええでしょ?
愛らしいお願いだと、構わないと返した縁の傍で蜻蛉はいつしかすっかり眠ってしまって。
うぅんと唸るところり、縁へと寝返りを打つのだった。
おやおや、こっちを向かないから良いでしょうなんて言っておいて、寝ている間に約束をすっかり忘れちまって。
縁は寧ろ微笑ましいと笑って、羽織を一枚かけてやる。この夜は優しいけれど――とても、冷えるから。
蜻蛉は薄く笑って、耳をぴこぴこと動かすのだった。
さぁて、起きた後の慌てっぷりが楽しみだ。
悪戯っぽく考える縁の顔はしかし、とてもとても――優しいのだった。
※SS担当者:奇古譚